私の父が唐津市町田に井上歯科医院を開院してもうすぐ50年が経とうとしています。
それ以前は肥前町で仕事をしていましたが、私が3歳の頃には唐津に出て来ていたように記憶しています。今でも肥前町からは沢山の患者様に来院して頂いています。
現在は私と妻の主に二人の歯科医師で診療しています。私たち夫婦は数年前に診療所の隣に住まいを設けました。唐津に暮らし、地元唐津の地域医療に貢献していきたいと考えています。
私は九州大学を卒業後、研修医・勤務医を経て唐津に帰って参りました。
それから既に20年以上が経ちましたが、長く診療所で仕事を続けていると患者様にも変化が現れてきます。
例えば、ついこの前まで泣きながら治療を受けていた子供さんが、いつの間にか普通に治療を受けられるようになり、そのうちに「ありがとうございました。」なんて挨拶をして帰るようになったりもします。子供の成長ってホントに目を見張るものがありますよね。感動します。
また片方で、以前はお元気だった患者様が、足腰が思うように動かなくなられたり、病気のために通院がしんどくなってこられたりもします。
何人かの方からは、「先生、最近階段が辛くなってきて、いつまで通院できるか・・・。」とか「先生、病院にエレベーターつけてくれないかなぁ。」と言われたことがありました。当院は二階にあるため、以前は外階段を上って診療室に入る必要がありました。そこで、数年前にエレベーターを設置致しました。皆様、遠慮なくご利用下さい。
エレベーターの設置と同時に院内にも大分手を加えて改修致しましたが、実はそれに先立ち診療所の建て替えや移転も検討は致しました。それならエレベーターを設置しなくても一階に診療所を造れば済みますからね。でも結局止めました。
理由はいろいろありますが、一つは家族のことです。私の両親は診療所の下の一階部分で生活をしているのですが、「長年住み慣れた家がいい。」と言ったこと。そしてもう一つは「出来るだけ移転はしたくないな。」という私の気持ちです。
移転すると、これまで当院を「かかりつけ歯科医」として通院して頂いていた患者様の内、一部の方々にはどうしてもご不便をおかけすることになると思います。そして、私の勝手な思い込みかもしれませんが、移転により、これまで当院がこの場所に少しずつ根を張って出来上がった居場所のような…この土地で与えてもらった役割のような・・・そんな「なにか」が消えてしまう気がして、それが残念に思えたからです。これからも同じ場所で皆様をお待ちしたいと思います。
私は九州大学を卒業後、九州大学第二口腔外科に研修医として残り、その後は歯周病科でも臨床登録医として勉強をしてきました。唐津に戻ったあとも大学の諸先輩方との勉強会に参加させて頂いたりしながら自分の臨床の基礎を築いてきたように思います。
一方、私の妻は長い間、九州大学歯学部病院で小児歯科医をして参りました。
彼女は小児歯科の専門医を取得しており、子供のむし歯や歯並びの治療だけでなく、口唇口蓋裂のお子様の治療も頑張っていました。私と結婚したあと、一緒に仕事をすることになり、井上歯科では小児歯科に対してもより専門的な対応ができるようになりました。
そこで、私は医院名の変更も考えました(例えば井上歯科・小児歯科とか・・・)。話は逸れますが、実は診療所に専門医等がいなくても○○小児歯科や△△インプラント歯科等の名前は好きにつけることは可能ではあります。
話を戻しましょう。父の代から井上歯科という「屋号」で仕事をしてきましたので、医院名の変更となると妻も遠慮します。話が進みそうもありませんでしたので少し違うアプローチを考えることにしました。
子供を連想させるような医院のマークを創ることにしました。エレベーター建屋にある、少女が風船を持って今にも地面から足が離れようとしているイラストがそれです。私が考えラフデザインしたものを、唐津の業者さんに仕上げて頂きました。
ただ、このイラストは単に皆さんに子供を連想して頂く為だけのものではありません。少女は風船を5つ手に持っています。風船は2種類あり、一つは唯一色が付いている薄桃色の風船。そして他は4つある少し大きいサイズの風船です。薄い桃色の風船は、他の風船よりも小さいながら、一番高く上がっていて、他の4つの風船はこの風船に導かれるように上がっているようにも見えます。
私はこう考えてこのマークをデザインしました。薄桃色の風船は、(医療)人としての「良心」を表しています。それよりもやや大きな4つの風船は、それぞれ歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士、そして歯科助手の持っている力を表しています。
「良心のもと4つの専門職が力を合わせ、子供が成長し大人になりそして老いていく、その誰もが辿るそれぞれの旅路を健やかで幸福なものとなるようにお手伝い出来たら。」そんな気持ちをデザインしました。
先ほど述べたように妻は長年九州大学の小児歯科で仕事をしてきました。
そして、実は妻の父親も歯科医師で、九州大学の小児歯科初代教授を務めました。退官後は九州大学名誉教授就任後、松本歯科大の病院長などもしていました。今は唐津で生活しており、周りの方たちのおかげで毎日を存分に楽しんでいるようです。私の卒業証書には学部長として義父の名前が記載されていますし、授業もそして試験も受けていました。
義父は島根県の南西部にある津和野の出身です。実家は中田歯科医院という歯医者さんでした。(津和野出身で画家・絵本作家として有名な安野光雅氏の著書の中に中田歯科医院のことが書かれているところがあります)。しかし義父は歯科医師になったあとも地元には戻らず、大学に残って研究の道を選びました。残念ですが中田歯科医院はもうありません。義父は今でもそのことを気にしているところがあるようです。ここで中田歯科医院のことを書いたのは、中田歯科医院の存在を書き記しておきたい気持ちと、「その魂は井上歯科が受け継いでいきます」という私が密かに勝手に結んだ約束を忘れないためです。
井上歯科では一般的なむし歯の治療からインプラント治療や矯正治療、審美治療などまで全ての治療を私と妻の二人の歯科医師が責任をもって行っています。また、当院では保険外診療の内容を、ご紹介・ご説明することはあっても、こちらから無理にお勧めすることは致しません。ご興味をお持ちの方がいらっしゃいましたら、担当の歯科医師や周りのスタッフまでお気軽にお声をかけて頂ければと思います。
私たちは、皆様の「かかりつけ歯科医」であるために、以下の5つのことを大切にしたいと考えています。
- むし歯や歯石などの感染源をしっかり除去する。
- 歯の寿命に大きく関わってくる根管治療に手を惜しまない。
- 出来るだけ噛める冠や入れ歯を作製する。
- 患者様の口腔内を健康に保つためにスタッフ全員が努力を続ける。
- 患者様が緊張せずに、また時には楽しく治療を受けられるような診療室の雰囲気づくりを心掛ける。
もしかすると当たり前の事のように思われるかもしれませんが、実はそれ程簡単なことではありません。長々と思うがままに書かせて頂きました。お付き合い頂き有難うございました。皆さんに、なんとなく井上歯科医院の「かんじ」をお分かり頂けたら幸いです。
2022年 8月 2日 井上歯科医院 院長 井上栄治